カレー南蛮の素を販売している杉本商店にお話を伺いました。

日頃カレー南蛮を深く考えることもせずにただただ食べ歩いている編集長ですがカレー南蛮の歴史を少しおさらいしてみたいと思いカレー南蛮の素などを販売している世田谷区の杉本商店を訪問し代表の杉本雄一さんにお話を伺いました。
(現在は武蔵野市吉祥寺南町に移転されています)

カレー南蛮発祥について

杉本:大きく分けると早稲田の三朝庵(2018年に閉店)が四谷の杉本商店にカレー南蛮の素を委託して作ったのと、大阪から来た目黒の方のお店のと、杉本商店の3つの話があって。
編集長:調べると色々出てきますよね。
杉本:諸説あります、でそれぞれやってるはやってるんですよね、カレー南蛮を当時から実際。
そしてメディアの露出が高いほど関連した記事も多い。
それで2008年ぐらいから自分のところも発信した方がいいよねってなって2009年にホームページ始めたんです。
うちに関してはホームページに書いてあることが全てです。

田中屋(屋号)杉本商店は、明治三十年頃、東京市四谷区で食堂と業務用食品卸売り問屋を数店舗営んでいました。創業者の杉本チヨの提案により四谷杉大門通りにあった日本蕎麦店で、西洋風味のカレーと日本人好みの鴨南蛮そばを合わせて売り出したのが、カレー南蛮の始まりと伝えられています。

https://sugimoto-shop.com/history.html

同じカレー南蛮の素でも異なる一杯に

杉本:三朝庵から委託されたように他のお店へも納品しています。
(編集長が訪問したお店の中でも杉本商店の「カレー南蛮の素」を使用しているお店がかなりの数あります。)
編集長:お店によってカレー南蛮の色が違いますけど素は違うものなんですか?
杉本:一緒です。
編集長:えっ!一緒なんですか?あれはつゆで変わってくるんですか?
杉本:そう。
「カレー南蛮の素」はそれぞれお店で違いを作るための配合なんです。
昔は蕎麦屋の店舗も多くてそれこそ昔なんて内神田は一時期すぐ近所に3、4軒あったんですよ、それでどうお客を分けるか、違いを作るかっていうんでああいう配合になっている。
近くの蕎麦屋を通りこして別の蕎麦屋に常連さんが来るとか、この蕎麦屋通り越して別の蕎麦屋が出前持っていくとか、そういう世界でどうやったらお店独自の味わいが出せるようになるのかっていうので、あの配合になっている。
これが一番の特徴。
編集長:あの黄色いのも、濃い茶色のカレー南蛮もカレー南蛮の素が同じっていうのはちょっと驚きですよね。
杉本:それぞれのお店によって全く違うものが作れる。

杉本商店 広告
画像提供:杉本商店

蕎麦屋のカレーの歴史

杉本:日本のカレーの歴史からいうとインドがあって、欧風があって、和風があって。
欧風と和風の歴史はほぼ並行してるんですよ。
同じカレーでいうと元々海軍、その海軍のが東京の蕎麦屋でカレーライスとカレー南蛮に進化させてるんですよね。
欧風カレーっていうのはレストランで少し価格が高い、カレーポットに入って提供されるのが並行して進んでいるんです。
蕎麦屋で進化したのがカレーライスとカレー南蛮で庶民的な味。
肉じゃがかビーフシチューかって話。
歴史をたどるとビーフシチューを日本風に作れって指令で海軍が作ったら肉じゃがになっちゃったという伝説も、、これは実際はわからないですけど。
牛肉とじゃがいもと人参と玉ねぎで味付けだけ違うじゃないですか、で肉じゃがにカレールーを入れるとカレーライスになると。
こういう流れから来てるのは和風カレー。

カレー南蛮の名前の由来

編集長:三朝庵と同じ時期に田中屋さんの親戚が営むそば屋でカレー南蛮始めてたんですね。
杉本:そう。
でなんで鴨南蛮っていうのからいうと馬喰町の鴨南蛮ってお店でねぎを使っていて、そういうこともあってねぎを使っているからカレー南蛮だろうと。

配達先のいろんなお店から話を聞くんですけど、たださかのぼっても大正ぐらいしか話を聞けないんですよ、みなさんいらっしゃらないから、、、。
当時はもともとカレールーがないから自分のお店の釜でカレー粉炒ったりしてルーを作ってるんですよね。
でカレーライスも作ったりして。
カレー南蛮だけでは語れない部分もあって。
カレーライスも同じように進化している、独自の進化をしてる中のカレー南蛮。
今は玉ねぎになったりもしてますけどねぎ南蛮だろうと。
編集長:玉ねぎのところも多いですよね。
杉本:使いやすいから。
ほかのものと同じ素材で使いまわしが出来る、かつ丼、親子丼にも入ってるしオペレーションとして玉ねぎは便利なので。

カレー南蛮はもともと蕎麦?

編集長:カレー南蛮はもともと蕎麦だったんですよね?
杉本:蕎麦です。
編集長:ネットの記事によってはカレー南蛮をうどん主体で書いてる記事もありますけど。
杉本:ありますね。
でもうどんでもいいと言えばいいし。
編集長:カレー南蛮でうどんはメーカー主導のイベントがありましたからね。

カレー南蛮のとろみはもともとあった?

編集長:カレー南蛮にはもともととろみはあったんですか?
杉本:もともとありましたね、小麦粉で。
ルーツが海軍カレーでしたから小麦粉のでんぷん質。
編集長:今はお店では片栗粉とかですかね?
杉本:入れてるお店もあるし、カレーを濃くしてるお店もあってお店の独自の配合になっている。
以前横須賀で140年前のカレーを復活させるイベントに参加させていただいたんですよ。
その時もとろみついてますね。

カレー南蛮の商品は少ない、、、

杉本:記事でカレー味噌煮込みうどんのレトルトのに蕎麦入れて食べてたよね、あれ面白かったね。なんでうどんの商品に蕎麦、、、。
編集長:あっ、、、オリエンタルの「名古屋カレー味噌煮込みうどん」ですよね。
杉本:ああいうとこ素晴らしいなと思って、、なんで蕎麦なの。
編集長:適当に作って食べてるだけで、、、。
でもカレー南蛮の商品って少ないですよね。
杉本:少ないですね、結局売れないんですよ。
大手メーカーがレトルトの出してたこともあったんですけど終売になってますね。
売れないですよ。
客層がカレーライスの10分の1がカレーうどんで、その10分の1がカレー南蛮だから、、、。
編集長:おいしいお店は本当においしいですしもっともっと世間に受けいられて欲しいですね。
杉本:カレー南蛮は伝統を守る人、新しいスタイルにチャレンジする人、様々な人が長い年月をかけて受け継いで来ました。
これからも進化し続けることを楽しみにしています。


取材後記
カレー南蛮に限らず蕎麦屋やカレー、自社製品を使用している商品のお話など貴重なお話を沢山伺うことが出来てとても為になる楽しい時間でした。
うちは黒子なのでとご謙遜されていましたが明治からカレー南蛮を支えてきた重要なお店です。
抜群においしかった立ち喰いそばのカレーが杉本商店のカレールーを使用していたり、ご紹介いただいて訪問した蕎麦屋のカレー南蛮も素晴らしいおいしさでした。
お仕事中にお時間を取っていただきありがとうございました。
資料として三朝庵の古い写真をお貸しいただけました。

三朝庵 お品書き
画像提供:杉本商店

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